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弾道ミサイル
弾道ミサイル
弾道ミサイル(だんどうミサイル)は、
大砲の弾のように空中に弧を描いて飛ぶ対地ミサイルのこと。
弾道ミサイルは最初の数分間に加速し、その後慣性によって飛翔する
世界初の弾道ミサイルは、第二次世界大戦中に
ナチス・ドイツが開発したV2ロケットである。
液体酸素とエタノールを燃料とするこのミサイルは
大戦中に三千発以上が使用され、、
主にロンドン、アントワープなどへの攻撃に
使われたが、戦局を変えるには至らなかった。
開発者はヨーロッパから北米が攻撃可能な
射程を持った大型二段式ミサイルA10の開発も
進めていたが、完成せずに終わった。

↑射程1万kmの大陸間弾道ミサイルの場合
弾道ミサイルの特徴としては長射程、困難な迎撃、
高価、低い命中精度が挙げられる。
迎撃が困難
弾道ミサイルが撃墜されづらいのにはいくつかの要因がある。
射程が長い
射程が長いと目標からはなれた安全な場所から発射できるため、
あらかじめ発射母機を破壊しようとしても
簡単にはできない。
また射程が長いと言うことはある場所を攻撃する際、攻撃可能な場所が
非常に広いことになり根本的に敵ミサイルを
発見することが困難ということにもなる。
迎撃困難な軌道を通る
ミサイルを迎撃すると言うことは当然、
ミサイルがいるところまで迎撃用のミサイルを
打ち上げなければならないが、弾道ミサイルは
短距離弾道ミサイル(以下SRBM)クラスでも
飛行中は宇宙空間を通るため、
そこまで迎撃用のミサイルを持っていくことは
容易ではない。
着弾までの時間が非常に短い
弾道ミサイルが発射されてから着弾するまでの時間は射程が
10,000km前後ある大陸間弾道ミサイル(以下ICBM)であれば
30分程度あるため迎撃体制に入るのは(SRBMなどに比べれば)
容易ではあるが、SRBMクラスであると5分程度で
着弾するため発射されてから迎撃体制をとることは
ほとんど不可能である。
非常に速度が速い
弾道ミサイルは対地攻撃用のため、当然、
発射されて宇宙に飛び出そうが最終的に地上まで
戻ってこなければどうしようもなく、
その段階であれば当然ミサイルが容易に到達できる
高度も通ることになるが、この段階では速度の
問題があるため他の段階と同じく簡単には
迎撃できない。
この再突入の段階は非常に速度が速く、
ICBMクラスであれば秒速約7km程度、
IRBMでも秒速2km程度まで最終的に加速される。こ
の段階で迎撃するとした場合、弾道弾迎撃ミサイル
の到達のタイミングがわずかにずれただけでも
弾道ミサイルはまったく別のところにいることになるため、
迎撃ミサイルは通常のミサイルに比べ高い精度が必要となる。
命中精度
基本的に弾道ミサイルは最初の数分間加速した後は
慣性で飛行するだけとなっている。
つまり最初の数分間で到達した速度によって
着弾地点はほとんど決まる。
加速終了地点から着弾地点までの距離が
短ければその差はそれほど問題にはならないが
弾道ミサイルの場合数千km単位で飛ぶためその
誤差は徐々に大きくなり着弾地点では大きな差となってしまう。
そのことから大体命中精度はSRBMクラスが
一番小さく射程が長くなるにしたがって誤差は
大きくなっていくのが一般的である。
命中精度を表すCEP(半数必中界)は100m〜2km程度
で対地兵器の中でも最低の部類に入り、
狙うのはどうしても都市単位になってしまう。
したがって、厳密な誘導を必要としない核弾頭との
組み合わせが必然的に実施された。
核弾頭を用いれば、2km程度の誤差は
全く問題とならない。
その結果、本来の定義ではない「(特に長射程の)弾道ミサイル=核兵器」
という認識が広まった。
価格
価格についてはピンからキリまであるため一概には
言えないが、例えばアメリカ海軍が使用する
潜水艦発射弾道ミサイル(以下SLBM)
トライデントD5は1基3,090万ドルと公表されている。アメリカ海軍が現在調達を進める
最新鋭戦闘機F/A-18E/Fスーパーホーネットが
3500万ドル、世界で3000機を販売することで
調達価格を抑えることを目的として開発中の
JSFF-35の予価が3000万ドルと言われる。
戦略核兵器の整備が「軍隊をもうワンセット」
そろえるほどの高額となる理由である。
当然ミサイルを兵器として使用するにはこれだけではなく
ミサイルの整備、ICBMであればミサイルサイロの建造、運用費用、
SLBMであれば潜水艦にかかる諸費用、更に言えば
それを護衛する潜水艦にかかる諸費用と
一つのシステムとして稼動させるには天文学的な
金額が必要である。
それに対して弾頭の重量は数百kg〜数t程度であるため通常兵器として
使用するには費用対効果の面から見た場合最悪と言える。
しかし湾岸戦争時のイラクのように、旧式で
命中精度も劣る弾道ミサイルを心理作戦に用いる場合もある。
使用目的
これらの特徴から弾道ミサイルは戦略兵器としての
意味合いが大きい。
核兵器を搭載したICBMやSLBMは安全な自国内および
その周辺から敵国を確実に攻撃することが可能で、
お互いにそのような状況を作り出すことにより
どちらも攻撃できない状況(相互確証破壊)が
できそれにより自国の安全を保障する。
過去には通常弾頭の弾道ミサイルが使用されたこともあるが、
これは敵国民の感情を煽るのが目的と言える。
弾道ミサイルによる攻撃だけでは敵国を占領できるわけでもなく
敵戦力を削ることもほとんどできないため実際の
ところダメージは少ない。
しかし弾道ミサイルは事前に危険を知らせることが
ほぼ不可能で、いつどこに飛んでくるか
わからないため敵国民に与える心理的な影響は大きい。
構造
基本的にはロケットと同じ構造であるため通常の
衛星打ち上げ用ロケットとして転用されたものもある。
ミサイルの段数はSRBM、準中距離弾道ミサイル(以下MRBM)
程度だと1段、IRBMだと2段、ICBMでは液体燃料の場合
2段、固体燃料の場合3段が多い。
弾頭
弾道ミサイルの命中精度は悪く、前述のとおり価格も高価である。
そのため、弾頭には核兵器をはじめとする
大量破壊兵器を搭載するのが一般的である。
大量破壊兵器を搭載した場合、命中精度の悪さを
補うことができ、さらに大量破壊兵器の搭載は
抑止力としての意味を持つため費用対効果の悪さを
補うこともできる。
弾頭の形状は再突入時空気抵抗による減速が少ないよう円錐型をしている。
弾頭の再突入時の速度は非常に速く、射程の長いものだと
再突入時の速度は有人の宇宙船が大気圏に再突入するのと
大差ないため弾頭には宇宙船と同じように耐熱素材をはる必要がある。
余談ではあるが日本が耐熱タイル技術の開発に
消極的だったのはこれが一つの原因である。
もとから民間技術と軍事技術は大差ないことが多いが、
耐熱タイルは大差ないのレベルではなく完全に
そのままミサイルに使用可能となってしまうため
弾道ミサイルでの使用を考えていないとしても周辺国には
脅威として捕らえられてしまうのである。
特殊な弾頭
弾道ミサイルに搭載される特殊な弾頭には
MIRV、MRV、MaRVが挙げられる。
MIRVは複数個別誘導再突入体などと呼ばれるもので
これは文字通り複数の弾頭を装備しそれぞれ別の
目標に対して攻撃が可能な弾頭である。
MRVはMIRVの無誘導版で、単一の目標へ複数の弾頭を投下する。
MIRVもMRVも導入するには小型核弾頭の開発技術が
必要で、21世紀初頭現在で多弾頭化された
弾道ミサイルの開発に成功した国は
アメリカ、ロシアのみで、フランスはアメリカの
技術協力を受けてMRVを開発し、イギリスは
ミサイルをアメリカから購入している。
MaRVは機動式再突入体と言われる。
これも文字通り再突入時に迎撃を回避したり命中率
を高めるための弾頭であるがあまり使用されていない。
これら複数弾頭のミサイルは散開時に本物の
弾頭の他に「チャフ」と呼ばれる、敵の迎撃を
困難にするための囮の弾頭や「ペネトレーション・エイド」
と呼ばれる敵の探知を無効化する手段を備えた
再突入体を持つものもある。
燃料
燃料は、初期のころには国によらず液体燃料が使われていた。
現在では西側諸国では固体燃料が、東側諸国では
液体燃料が主流となっている。
初期の液体燃料は酸化剤に液体酸素を
用いていたためにミサイルに搭載したまま
保存しておくことが不可能で、発射命令が
下ってから燃料注入を行い、実際に発射態勢に
成るまでに数時間かかり、即応性に問題があった。
現在の弾道ミサイルに使用される
液体燃料(非対称ジメチルヒドラジンと四酸化二窒素の組み合わせなど)
の場合ミサイルに搭載したまま長期間の保存が可能であるため
即応性に関しては固体燃料との差は無い。
現在において液体燃料と固体燃料の差は比推力と
毒性、安全性、それにコントロールのしやすさである。
液体燃料は固体燃料より比推力が大きいため
ミサイルの段数は固体燃料に比べ1段少ないのが
一般的であるがその代わりに燃料は有毒で2種類の燃料が
混ざっただけで発火するため取り扱いには注意が必要である。
それに対して固体燃料は段数が1段増えてしまうものの
固体であるため直接付近で火事でも起こらない限り
問題は無くその点では液体燃料に比べ非常に優れている。
また固体燃料は1度点火したら推力の調整も何も
できず最後まで燃えてしまうが、液体燃料は
燃焼させる燃料の量を調整でき速度のばらつきを
抑えることができるため理論的には固体燃料より
命中精度は高い。
ただし実際のところは誘導方式にある程度左右されるため
液体固体による差はあまりない。
誘導方式
誘導方式は古いものでは無誘導もあったが、現在では慣性誘導が一般的で、
ものによってはそれに加え天測が使用される。
通常の対地ミサイルの場合レーダーや赤外線で目標
を捕らえるが弾道ミサイルは弾頭自体にはエンジンなどが
搭載されていないためその段階での軌道変更は
不可能である(エンジンなどを搭載したMaRVと呼ばれるものも存在するが例外的)。
アメリカ海軍が使用するトライデントD5では更に
命中精度を高めるためGPSを併用した誘導システムの
試験が行われたことがある。
これは通常弾頭の使用を考慮して行われた試験で
あると言われるが結局費用対効果の面から
不要と判断されたのか実用化にはいたっていない。
大陸間弾道ミサイル
(ICBM)
射程約6400km以上のもの。米ソ間で結ばれたSALT-IIでは
射程5,500km以上のものと定義。
中距離弾道ミサイル (IRBM)
射程2,000〜6,000km程度のもの
準中距離弾道ミサイル
(MRBM)
射程800〜1,600km程度のもの
短距離弾道ミサイル (SRBM)
射程約800km以下のもの
潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)
射程によらず潜水艦から発射されるもの
空中発射弾道ミサイル (ALBM)
射程によらず航空機から発射されるもの
因みに最近騒がれている北朝鮮の弾道ミサイル
テポドンは射程が2000kmなため中距離弾道ミサイル(IRBM)
ノドンは射程約1300km〜1500kmであるため準中距離ミサイルである
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